第 10 章
変数変換($t)2項関数型パラメータ
2項関数型変換オペランド一覧
変量分析($$v)セクションの変数変換($t)コマンドには,第7章の変数変換パラメータ一覧に記載しているように,9つのタイプのパラメータがある.そのうち,1項関数型と2項関数型を除く7つの非関数型パラメータについては前々章で説明しているし,前章では1項関数型について述べている.本章では2項関数型について詳述する.
本ページの書式例参照プログラムはWeb版xcampusの場合は各大学のWeb版のプログラム事例として収録され,クリック1つですぐに実行できる.Windows版の場合は,xcampusの[ファイル]メニューの[開く]をクリックして,xcampusの見本プログラム群の[rffmtprg]フォルダに収録されている.Linux版xcampusの場合は,コマンド xccp を入力することによってプログラム一覧が表示される.
1゜ 2゜ 3゜ 4゜ 5゜
□=■■■(演算式,演算式)定数 |
変数変換のうち演算式で取り扱い困難な「2項関数型変換オペランド」は以下の一覧表の通りである.被変換変数には演算式を用いることができる.本ガイドでは,よく利用されるオペランド(ゴシック体でハイパーリンク)を優先的に説明している.他のオペランドについては旧著の2冊を参照されたい.
区 分 | オペランド | 内 容 |
---|---|---|
異時点データ処理 (時系列のみ) |
crg | 時差相関係数系列 |
データ統合処理 | csl | データ統合 |
フラグ処理 | f=i | フラグ(等しい)変量 |
fne | フラグ(等しくない)変量 | |
f=c | フラグ(文字データ等しい)変量 | |
fnc | フラグ(文字データ等しくない)変量 | |
f.> | フラグ(大きい)変量 | |
f>= | フラグ(大きいか等しい)変量 | |
f.< | フラグ(小さい)変量 | |
f<= | フラグ(小さいか等しい)変量 | |
f.* | フラグ(論理積)変量 | |
f.+ | フラグ(論理和)変量 | |
f.− | フラグ(論理差)変量 | |
スカラー 帰着処理 |
@.n | 個体(ケース)の数 |
@.q | 共分散 | |
@.r | 相関係数 | |
順序化処理 | pmt | 並び替え |
r.g | 順位(大きい順)系列 | |
r.l | 順位(小さい順)系列 | |
データ集約 処理 |
&.s | データ集約(サメイション) |
&.a | データ集約(アベリッジ) | |
&.t | データ集約(トップ) | |
&.b | データ集約(ボトム) | |
&.f | データ集約(ファ−スト) | |
&.l | データ集約(ラスト) | |
&.n | データ集約(ケースの数) | |
&.v | データ集約(分散) | |
&.d | データ集約(標準偏差) |
オペランド | 内 容 |
---|---|
crg | 時差相関係数系列 |
3゜の被変換変量と,4゜の被変換変量のk期のラグ変量との相関係数を
k
= 0,1,2,3,…について求める.つまり,3゜の変量と,4゜の変量の時差がないときの相関係数,時差が1のときの相関係数,時差が2のときの相関係数,…,というように求めた相関係数を順に並べたものが時差相関係数系列に他ならない.3゜の変量を基準とし,4゜の変量の時差を次々にとって求めている点に注意されたい.
変換後の新変量は,月次や四半期,年次といった時系列変量ではなく,ケ−ス番号0(時差0のときの数値),ケース番号1(時差1のときの数値),…,というようなケース変量となる.
書式例 Q=crg(i,f)
R=crg(f,i)
△=pr*(Q,R)
は,変量i(例えば設備投資)を基準変量として,変量f(例えばキャシュ・フロー)の時差を逐次的にとりながら時差相関係数系列
Q
を求めている.逆に,変量f(例えばキャシュ・フロー)を基準変量として,変量i(例えば設備投資)の時差を逐次的にとりながら時差相関係数系列
R
を求めている.両時差相関係数系列Q,Rをプリントしている.
オペランド | 内 容 |
---|---|
csl | データ統合 |
3゜の被変換変量と4゜の被変換変量とをデータ期間(ケース番号)を考慮しながら統合して1変量にする.
このデータ統合処理は,シミュレーションの際に用いられる.観測値Mが1997年第1四半期までデータが存在していて,シミュレーションによる推定値mを2001年第4四半期まで求めるとする.
書式例 m=csl(M,m)
は,観測値Mのデータ所在期(1997年第1四半期)まではそのMの値を,その後は推定値mの値で補う形で,新変量mを更新しながら,予測を行う書式に用いられる.
書式例 m=csl(M,m)1989.4
は,観測値Mの定数で指示している時点(1989年第4四半期)まではそのMの値を,その後は推定値mの値で補う形で,新変量mを更新しながら,ファイナル・テストを行う.つまり,定数の次の時点(1990年第1四半期)を初期時点とするファイナル・テスト用の書式になっている.
オペランド | 内 容 |
---|---|
f=i | フラグ(等しい)変量 |
fne | フラグ(等しくない)変量 |
f=c | フラグ(文字データ等しい)変量 |
fnc | フラグ(文字データ等しくない)変量 |
f.> | フラグ(大きい)変量 |
f>= | フラグ(大きいか等しい)変量 |
f.< | フラグ(小さい)変量 |
f<= | フラグ(小さいか等しい)変量 |
f.* | フラグ(論理積)変量 |
f.+ | フラグ(論理和)変量 |
f.− | フラグ(論理差)変量 |
3゜の被変換変量の数値が,4゜の被変換変量の数値より大きい場合に
1 ,その他の場合に△(空白)とするフラグ変量を作成する.
書式例 H=f.>(absx,absy)
は,変量 x の絶対値が変量 y
の絶対値より大きい時点(ケース)については
1,等しいもしくは小さい時点(ケース)については△(欠落値)とするフラグ変量
H を作成している.
オペランド | 内 容 |
---|---|
@.n | 個体(ケース)の数 |
@.q | 共分散 |
@.r | 相関係数 |
3゜の被変換変量データと4゜の被変換変量データの標本共分散を求め,その数値のみのスカラー変量を作成する.5゜の定数項は△(空白)のままでよい.
書式例 H=@.q(x,y)
は,変量 x と変量 y の共分散のスカラー変量 H
を作成している.
オペランド | 内 容 |
---|---|
pmt | 並べ替え |
r.g | 順位(大きい順)系列 |
r.l | 順位(小さい順)系列 |
3゜の被変換変量の各ケースを4゜の順位変量にしたがって並び替える.同一順位が複数個ある場合は,3゜の変量のケース番号の若い順に並び替える.
書式例 j=r.g(d)blank
// dの大きい順(定数項blankで欠測値にも末尾の順位)の順位変量j
N=pmt(N,j)
// 並び替え(順位変量jによる)
A=pmt(A,j)
M=pmt(M,j)
d=pmt(d,j)
q=pmt(q,j)
△=pr*(N,A,M,d,q)
// 数値プリント
「Web版xcampus財務ランキング事例集」に多数のプログラムを掲載
<マクロ:百貨店販売額と民間最終消費支出の時差相関係数系列>
変量分析セクションの変量記号割当コマンドの書式($a in $$v)例1 と類似のプログラムである.日本経済データセクション($$n)の時系列入力コマンド($t)で,季節調整済で年率換算の名目民間最終消費支出の四半期系列と,百貨店の販売額の月次系列を入力している.
変量分析セクション($$v)の変量記号割当($a)コマンドで,これらの系列に各1文字の変量記号x,yを割り当てている.変数変換($t)コマンドで,月次の百貨店販売額xを3ヶ月ごとに合計して4半期系列に直し,また個体識別文字系列を作成して変量記号をPとしている.そしてx変量,y変量の前年同期比増減率を求め,X変量,Y変量としている.直前に表示範囲コマンド($d)で全ケース(期間)を指示しているので,プリント「pr*」オペランドでの変量記号x,y,X,Yの数値データは全範囲が出力される.
続いて,再度の変数変換($t)コマンドの後で,X変量を基準とし,Y変量の時差を0,1,2,…と順にとる時差相関係数系列Qを作成する.次にY変量を基準とし,X変量の時差を0,1,2,…と順にとる時差相関係数系列Rを作成する.プリント「pr*」オペランドで,これらの時差相関係数系列をプリントしている.直前に表示範囲コマンド($d)による指示がないので,デフォルトの最初の100ケースまでがプリントされる.
// v-t4-f1 $$n //日本経済セクション $t //時系列入力コマンド SDS,department sales //百貨店販売額 (MTコード88011) CP@,consumption //民間最終消費支出(季調値,年率換算値)(MTコード100360) $l //入力変量リスト ============ コメント行 $$v //変量分析セクション $a //変量記号割当コマンド x,department sales //百貨店販売額に x の変量記号 y,consumption //民間最終消費支出に y の変量記号 $d //表示範囲コマンド all //全ケース(期間) $t //変数変換コマンド x=&.s(x)4,1 //[&.s]データ編集(合計)[4,1]四半期へ,1月始点 P=:ci(x) //個体識別文字列作成 X=%.c(x) //前年同期比増減率 Y=%.c(y) //前年同期比増減率 △=pr*(x,y,X,Y) //プリント(△はスペース1文字) $t //変数変換コマンド Q=crg(X,Y) //時差相関係数系列,X基準,Y時差 R=crg(Y,X) //時差相関係数系列,Y基準,X時差 △=pr*(Q,R) //プリント(△はスペース1文字) ================ コメント行 $$g //グラフセクション $d //表示範囲コマンド all //全ケース(期間) $p //プロットコマンド x,y //変量xと変量yを別スケールで XY //変量X,Yを同一スケールで $p //プロットコマンド QR //時差相関係数系列Q,R $c //散布図コマンド y,x,*,P //縦軸y,横軸x,回帰線*,散布点印字P Y,X,*,P //縦軸y,横軸x,回帰線*,散布点印字P ================== コメント行 $$ //終了セクション |
書式($t in $$v)2項関数型例1のプログラム参照[v-t4-f1.txt]