第 17 章
時系列変量作成パラメータ 《2000.8.25修正》
書式($t in $$c)例1
書式($t in $$c)例2
書式($t in $$c)例2の出力結果
書式($t in $$c)例3
書式($t in $$c)例3の出力結果
この章では、『一般事業会社・連結決算データ』の連結財務データから,時系列変量を作成するコマンドやパラメータを説明する.企業ごとの,あるいは産業ごとの時系列データを作成する.
なお連結財務セクションは,第15章で述べているように「$$c」で開始される.
本ページの書式例参照プログラムはWeb版xcampusの場合は各大学のWeb版xcampusの『xcampus構文解説』書式例として収録され,クリック1つですぐに実行できる.Windows版の場合は,xcampusの[ファイル]メニューの[開く]をクリックして,xcampusの見本プログラム群の[rffmtprg]フォルダに収録されている.Linux版xcampusの場合は,コマンド xccp を入力することによってプログラム一覧が表示される.また書式例の説明は,拙稿「連結財務分析の可能な経済経営教育研究システム」(神戸商科大学経済研究所年報第28号,1998年3月)を参照されたい.
フラグ作成コマンド($f)で絞り込まれた企業ないしは企業群を対象に,時系列データの変量を作成する.そのための1形式のコマンドと1形式のパラメータが用意されている.
連結財務データの時系列(time series)作成コマンドは次の形式をとる.
1゜
$t☆ |
時系列変量を作成するためのパラメータは,上述の「$t」コマンドに続いて,次の形式で記述する.
時系列変量作成パラメータ 《2000.8.25修正》
書式($t in $$c)例1
書式($t in $$c)例2
書式($t in $$c)例2の出力結果
書式($t in $$c)例3
書式($t in $$c)例3の出力結果
1゜ 2゜ 3゜ 4゜ 5゜
■■■☆◎◎◎◎,<◇>,変量名 |
- 連結売上高や連結営業利益などの損益計算書に記載の項目はフロー・データなので,時系列作成オペランドとして集計量「&fl」,一社当たり計数「@fl」,社数「#fl」を用いる.連結流動資産や連結資本などの貸借対照表に記載の項目はストック・データなので,集計量「&st」,一社当たり計数「@st」,社数「#st」のオペランドを用いる.この差異に十分に注意されたい.
- 月次の時系列が作成されるが,すべて年率換算値であることに注意されたい.そして時系列変量の内部データは実数として作成されるが,時系列作成情報においては,小数点以下を表示しないで整数で表示される.その絶対値が一定の値を越えたときは,表の上部に10のベキ乗を記して,計数の下位の位を若干落とした数値で表示することがある.
- また,時系列の各時点において集計の対象となった企業の社数は,重要な指標である.対象企業の社数の増減は,時系列データの集計量に重要な影響を及ぼす.この時系列変量を分析に利用する際には,社数も同時に表示される時系列作成情報を事前に注意深く調べる方がよいであろう.時系列作成情報については,書式($t in $$c)例2の出力結果の時系列作成情報を参照されたい.各時点の社数がばらついている場合は,処理対象期間を限定した方がよいであろう.
- 各社の決算データの多くは年1回ないしは2回のデータなのに,月次の時系列が作成されるというのは,不思議な感じがするかもしれない.が,種明しは簡単で,決算期でない月を補間値で埋め合わせているに過ぎないのである.それゆえ,集計の対象となる各社の決算期がばらついている場合は,集計値も月毎に変わるであろうが,決算期が揃っている場合は,フローの集計値は年毎に階段状に変化するだろうし,ストックの集計値は年毎に折線状に変化することになる.このような月次データでも探索的分析には十分に耐えられる.
- もし月次の時系列ではなく,年次や四半期の時系列が必要なばあいは,変量分析セクション($$v)の変数変換($t)のところで,この月次の系列を,年次や四半期の系列に編集すればよい.以下の 書式($t in $$c)例1,書式($t in $$c)例2,書式($t in $$c)例3 の各プログラムを参照
これは,書式($r in $$c)例1の前半部分の再掲である.連結財務($$c)セクションにおいてフラグ($f)コマンドで,業種コード(項番7103,連結旧項番201)が鉄鋼業の特殊鋼(コード17163)の企業群にフラグjを立てる.上場場部(項番7015,旧項番204)の項目の数値が11の企業に,すなわち東証1部上場の企業にフラグhを立てる.
連結決算の上場場部の定義変更で,東証1部は101ではなく,11と指示することになった.次に,jフラグとhフラグの両方にフラグの立つ企業,すなわち特殊鋼で東証1部上場の企業にフラグgを立てる.
次に企業名($n)コマンドでフラグgの企業名リストを出力する. 原数値プリント($p)コマンドで,東証1部上場の特殊鋼の各企業の連結売上高(項番3001,旧項番055),連結営業利益(項番3006,旧項番059),連結受取利息・割引料(項番3008,旧項番061),連結受取配当金(項番3009,旧項番062),連結支払利息・割引料(項番3016,旧項番066),連結当期利益(項番3058,旧項番086),連結従業員数(項番5056,旧項番107),連結子会社数(項番1026,旧項番108)の原数値を出力している.これらは[数値リスト]ないしは[Excelの表]として出力される.
次に期間限定($r)コマンドで1985年4月以降を対象とするように,パラメータに「8504,0103」と指示する.時系列($t)作成コマンドで,東証1部上場の特殊鋼の各企業に関する連結売上高(項番3010,旧項番055),連結受取利息・割引料(項番3008,旧項番061),連結受取配当金(項番3009,旧項番062),連結支払利息・割引料(項番3016,旧項番066)の集計値を年率ベースの月次系列で作成する.
============= c-r-f1 ================ $$c // 連結財務データセクション $f // 処理対象企業フラグコマンド <j>==..(7103)17163 //★業種が鉄鋼業の特殊鋼にフラグj <h>==..(7015)11 // 上場場部.東証1部 11 <g>=:*.(j,h) // 特殊鋼で,かつ東証1部上場の企業にフラグg $n // 企業名コマンド lst,<g> // フラグgの企業のリスト出力 $p // 原数値プリントコマンド .... 【新項番3001】 売上高・営業収益 .... 【新項番3006】 営業利益 .... 【新項番3008】 受取利息・割引料・有価証券利息 .... 【新項番3009】 受取配当金 .... 【新項番3016】 支払利息・割引料 .... 【新項番3058】 当期利益 .... 【新項番5056】 従業員数(単位:人) .... 【新項番1026】 連結子会社数(単位:社) <g>,3001,3006,3008,3009,3016,3058,5056,1026 $r // 期間限定コマンド 8504,0103 //★1985年4月から2001年3月 $t // 時系列作成コマンド &fl,3001,<g>,sales // 連結売上高 &fl,3008,<g>,interest income // 連結受取利息・割引料 &fl,3009,<g>,dividends income // 連結受取配当金 &fl,3016,<g>,interest cost // 連結支払利息・割引料 ============== 変量分析セクション $$v $a //変量記号割当コマンド s,sales r,interest income d,dividends income i,interest cost $t //変数変換コマンド s=&.a(s)4,1 // 年率月次を3ヶ月毎の平均をとって四半期に1月始点で編集 r=&.a(r)4,1 // 「&.a」 「4,1」 d=&.a(d)4,1 i=&.a(i)4,1 x=(i-r-d)/s*100 // 連結売上高純金利負担率 △=pr*(s,r,d,i,x) // 数値プリント(△は半角スペース) a=<.a(x) // 移動平均 b=<.d(x) // 移動勾配 P=:ci(x) // 散布点識別文字変量 ============== グラフセクション |
<連結決算:大手・中堅建設業の連結売上高原価率・連結総資本回転率の時系列>
連結財務データから時系列変量を作成し,時系列分析を行う書式例である.============= c-t-f2 ================================= $$c //連結財務データセクション $f // 処理対象企業フラグコマンド <g>==..(7103)41401,41402 //★業種が大手建設と中堅建設にフラグg $n // 企業名コマンド lst,<g> // フラグgの企業のリスト出力 $p // 原数値プリントコマンド .... 【新項番3001】 売上高・営業収益 .... 【新項番3002】 売上原価・営業原価 .... 【新項番2144】 負債・少数株主持分・資本合計、単独:負債・資本合計 .... 【新項番3006】 営業利益 .... 【新項番3008】 受取利息・割引料・有価証券利息 .... 【新項番3009】 受取配当金 .... 【新項番3016】 支払利息・割引料 .... 【新項番3058】 当期利益 .... 【新項番5056】 従業員数(単位:人) .... 【新項番1026】 連結子会社数(単位:社) <g>,3001,3002,2144,3006,3008,3009,3016,3058,5056,1026 // 項番指示 △△△△△△△△△△ // 追加プリント(30社ごとにブランク行を追加挿入) $r // 期間限定コマンド 8504,0103 //★1985年4月から2001年3月 $t // 時系列作成コマンド &fl,3001,<g>,sales // 連結売上高 &fl,3002,<g>,cost of goods sold // 連結売上原価 &st,2144,<g>,total liability & net worth // 連結総資本 $l // 入力変量名リストコマンド =============== 変量分析セクション $$v $a // 変量記号割当コマンド x,sales y,cost of goods sold z,total liability & net worth $t // 変数変換コマンド x=&.a(x)1,4 // 月次を年度(4月始点〜翌年3月)に1年間の平均をとって編集 y=&.a(y)1,4 // 「1,4」 「&.a」 z=&.a(z)1,4 r=(y/x*100) // 連結売上高原価率 u=(x/z) // 連結総資本回転率 △=pr*(r,u) // 数値プリント(△は半角スペース) P=:ci(x) // 個体(年度)識別文字系列 =========== グラフセクション $$g $d // 表示範囲コマンド all // 全期間 $p // プロットコマンド r // 連結売上高原価率r u // 連結総資本回転率u r,u // 連結売上高原価率r,別スケールで連結総資本回転率u $c // 散布図コマンド r,u,*,P // 縦軸r変量,横軸u変量,回帰線表示*,個体識別P ==================== 終了セクション $$ |
書式($t in $$c)例2の旧プログラム・テキスト参照[c-t-f2-old.txt]
r | u | |
r=(y/x*100) | u=(x/z) | |
1985 | 90.191 | 0.8763 |
1986 | 90.194 | 0.8435 |
1987 | 89.965 | 0.7691 |
1988 | 89.644 | 0.7393 |
1989 | 89.171 | 0.7285 |
1990 | 88.323 | 0.719 |
1991 | 88.144 | 0.7007 |
1992 | 88.387 | 0.6752 |
1993 | 88.301 | 0.6397 |
1994 | 89.166 | 0.629 |
1995 | 90.862 | 0.6422 |
1996 | 91.163 | 0.6819 |
1997 | 91.002 | 0.6966 |
1998 | 90.561 | 0.6775 |
1999 | 89.492 | 0.6736 |
2000 | 90.36 | 0.7483 |
<連結決算:大手・中堅建設業の連結売上高原価率・連結総資本回転率の時系列>
前書式($t in $$c)例2よりも一層厳密に時系列変量を作成する書式例である.
連結財務($$c)セクションにおいて,分析期間中の当初から最近まで継続してデータの採れる企業を対象に選ぶことになる.分析期間としては1990年4月〜2001年3月を念頭に置いている.まず期間限定($r)コマンドで1990年度に設定して,フラグ($f)コマンドで大手および中堅の建設業の企業にフラグbを立てると21社が選ばれる.再度の期間限定($r)コマンドで2000年度に設定して,フラグ($f)コマンドで大手・中堅の建設業の企業にフラグeを立てると49社が選ばれ,1990年度のフラグbと2000年度のフラグeの両方に共通の企業を抽出してフラグgとする.フラグgでは18社に絞られる.連結決算原数値プリント($p)コマンドの直前に期間限定($r)コマンドで期間指定解除のブランク・パラメータを指示して,各企業の連結売上高(項番3001,旧項番055),連結売上原価(項番3002,旧項番056)等々の原数値を全期間出力するようにしている.
4度目の期間限定($r)コマンドで当初の分析期間の1990年4月〜2001年3月を指示してから時系列作成($t)コマンドで連結売上高(項番3001,旧項番055)と連結売上原価(項番3002,旧項番056),連結総資本(負債・少数株主持分・資本合計,項番2144,旧項番054)の集計値の時系列を作成してみた.
その結果は,上記の連結売上高の時系列作成情報から分かるように,1990年4月から1991年2月まではすべて「case
16」で16社の集計になっていて,フラグgの18社と一致しない.これは小田急建設とハザマの2社の連結データの収録開始時期が1991年3月期であるため,1991年2月以前は時系列集計に含まれないためである.1992年3月〜2000年12月の期間は「case
18」で18社全社の集計が行われている.2001年1月〜2001年3月は16社に減少している.これは決算期の到来していない企業,つまり決算期が3月でない企業があるためである.具体的には新井組と福田組が12月決算で,他の13社はすべて3月決算である.18社のデータが揃う期間,つまり1991年3月〜2000年12月に指示し直して時系列を作成しているのが,この書式例である.
変量分析($$v)セクションで,連結売上高,連結売上原価,連結総資本(負債・資本合計)の3系列に,x,y,zの各1文字の変量記号を割り当て,変数変換コマンド($t)のところで,月次系列を四半期系列に編集し,売上高原価率rと総資本回転率uの2つの比率を求めている.回帰($r)コマンドでは,15社の集計値として連続性のあるものになった3系列を用いて回帰分析を行っている.被説明変数に連結売上原価y,説明変数に連結売上高x,連結総資本zを用いて重回帰を行い,その回帰係数のベクトル変量Fを導出している.
グラフ($$g)セクションでは,売上高原価率rと総資本回転率uの2つの比率だけでなく,連続性を保証された連結売上高x,連結売上原価y,連結総資本zも用いてプロットしたり,散布図や3次元図を描いたりしている.
============= c-t-f3 ================================ $$c // 連結財務データセクション $r // 期間限定コマンド 9004,9103 //★1990年4月から1991年3月 $f // 処理対象企業フラグコマンド <b>==..(7103)41401,41402 //★業種が大手建設と中堅建設にフラグb(1990年度の決算所在企業) $r // 期間限定コマンド 0004,0103 //★2000年4月から2001年3月 $f // 処理対象企業フラグコマンド <e>==..(7103)41401,41402 //★業種が大手建設と中堅建設にフラグe(2000年度の決算所在企業) <g>=:*.(b,e) // フラグbとフラグeの共通企業(1990年度と2000年度の両決算所在企業) $n // 企業名コマンド lst,<g> // フラグgの企業のリスト出力 $r // 期間限定コマンド // 期間指定解除(全期間に戻す) $p // 原数値プリントコマンド .... 【新項番3001】 売上高・営業収益 .... 【新項番3002】 売上原価・営業原価 .... 【新項番2144】 負債・少数株主持分・資本合計、単独:負債・資本合計 .... 【新項番3006】 営業利益 .... 【新項番3008】 受取利息・割引料・有価証券利息 .... 【新項番3009】 受取配当金 .... 【新項番3016】 支払利息・割引料 .... 【新項番3058】 当期利益 .... 【新項番5056】 従業員数(単位:人) .... 【新項番1026】 連結子会社数(単位:社) <g>,3001,3002,2144,3006,3008,3009,3016,3058,5056,1026 // 項番指示(最初の30社までプリント) $r //期間限定コマンド 集計会社数の揃う期間に限定 9103,0012 //★1991年3月〜2000年12月(当初は1990年4月〜2001年3月までを指示して実行) $t // 時系列作成コマンド &fl,3001,<g>,sales // 連結売上高 &fl,3002,<g>,cost of goods sold // 連結売上原価 &st,2144,<g>,total liability & net worth // 連結総資本 $l //入力変量名リストコマンド =============== 変量分析セクション $$v $a // 変量記号割当コマンド x,sales y,cost of goods sold z,total liability & net worth $t // 変数変換コマンド x=&.a(x)4,1 // 月次を四半期に1月を始点として3ヶ月毎の平均をとって編集 y=&.a(y)4,1 // 「4,1」 「&.a」 z=&.a(z)4,1 r=(y/x*100) // 連結売上高原価率 u=(x/z) // 連結総資本回転率 △=pr*(x,y,z,r,u) // 数値プリント(△は半角スペース) P=:ci(x) // 個体(年度)識別文字系列 $r //回帰コマンド F,@"*,y=(x,z) // 回帰係数ベクトルF =========== グラフセクション $$g $d // 表示範囲コマンド all // 全期間 $p //プロットコマンド r // 連結売上高原価率r r,xy // 連結売上高原価率r,別スケールで連結売上高xと連結売上原価y u // 連結総資本回転率u u,xz // 連結総資本回転率u,別スケールで連結売上高xと連結総資本z r,u // 連結売上高原価率r,別スケールで連結総資本回転率u $c // 散布図コマンド y,x,*,P // 縦軸y変量,横軸x変量,回帰線表示*,個体識別P x,z,*,P // 縦軸x変量,横軸z変量,回帰線表示*,個体識別P r,u,*,P // 縦軸r変量,横軸u変量,回帰線表示*,個体識別P $3 // 3次元図コマンド y,x,z,P,F // 縦軸y変量,横軸x変量,奥行軸z変量,個体識別P,関数F(回帰平面) ==================== 終了セクション $$ |
書式($t in $$c)例3の旧プログラム・テキスト参照[c-t-f3-old.txt]