第 4 章
ビジネス財務セクション($$b):時系列データ($t)
時系列変量作成($t)
時系列変量作成パラメータ 《2000.8.25修正》
書式($t in $$b)例1《2002.4.15修正》
書式($t in $$b)例1の出力結果
この章では、『一般事業会社・本決算データ』のビジネス財務データから,時系列変量を作成するコマンドやパラメータを説明する.企業ごとの,あるいは産業ごとの時系列データを作成する.
なおビジネス財務セクションは,第2章で述べているように「$$b」で開始される.
本ページの書式例参照プログラムはWeb版xcampusの場合は各大学のWeb版xcampusの『xcampus構文解説』書式例として収録され,クリック1つですぐに実行できる.Windows版の場合は,xcampusの[ファイル]メニューの[開く]をクリックして,xcampusの見本プログラム群の[rffmtprg]フォルダに収録されている.Linux版xcampusの場合は,コマンド xccp を入力することによってプログラム一覧が表示される.
フラグ作成コマンド($f)で絞り込まれた企業ないしは企業群を対象に,時系列データの変量を作成する.そのための1形式のコマンドと1形式のパラメータが用意されている.
【コマンド】
時系列(time
series)作成コマンドは次の形式をとる.
1゜
- 1゜ 出力オプション 「△」もしくは「*」
「△」のばあい,[数値リスト]に時系列情報を出力する.
「*」のばあい,時系列情報の出力が抑止される.
時系列変量を作成するためのパラメータは,上述の「$t」コマンドに続いて,次の形式で記述する.
時系列変量作成パラメータ 《2000.8.25修正》
書式($t in $$b)例1
書式($t in $$b)例1の出力結果
1゜ 2゜ 3゜
4゜ 5゜
- 1゜ オペランド 特定の3文字
- 「&fl」 売上,利益,経費などのように,フロー・データとしての計算処理を行い,各社の数値の集計量の時系列を作成する.つまり,処理対象期間の任意の時点(月)で,その時点(月)の企業活動を反映している決算期の数値の年率換算値を,フラグの立っている企業すべてについて求め,それを集計する形で時系列変量が作成される.その時点(月)が決算期の場合は決算数値の年率換算値を,その時点(月)が決算期でない中間時点の場合は,その時点の直後に到来する決算期の数値の年率換算値を採用する.年率換算は簡単な方法で求めることになる.たとえば,年2回決算の場合は2倍することにし,13カ月の変則決算の場合は12/13倍することになる.
処理対象期間内のある時点(月)で,その時点の前後に決算がなくて補間処理できない(フロー補間ができてもストック補間が出来ない)ばあいや,決算データがあっても欠測値「−999999999」であるばあい,当該企業を集計から外して時系列を作成する.集計の対象となる全部の企業について数値が欠落する時点(月)は数値の代わりに△(空白)を入れて欠落値とする.
- 「@fl」 売上,利益,経費などのように,フロー・データとしての計算処理を行い,各社の数値の集計量を社数で割った一社当り計数の時系列を作成する.社数で除するところを除いて,時系列作成方法,年率換算,欠測値処理は「&fl」オペランドと同じである.
- 「#fl」 フロー・データとしての計算処理が行なわれる企業の社数に関する時系列を作成する.処理対象期間内のある時点(月)で,フロー・データの集計から外される企業があるばあい,その時点(月)の社数はその分だけ少なくなる.
- 「&st」 資産,負債,従業員数などのように,ストック・データとしての計算処理を行い,各社の数値の集計量の時系列を作成する.つまり,処理対象期間の任意の時点(月)で,その時点(月)の企業活動を反映している決算期の数値と,その1期前の決算期の数値を直線補間した数値を,フラグの立っている企業すべてについて求め,それを集計する形で時系列変量が作成される.その時点(月)が決算月であるばあいは,その決算数値がそのまま集計対象の計数に採用される.決算月でないばあいは,その時点(月)の前後にある2つの決算の数値を直線補間した値を採用することになる.前の決算数値から等差的に増加ないしは減少して後の決算数値になったと考えて,直線補間値を採用するのである.年2回決算の場合や,13カ月とか7カ月といった変則決算の場合でも,この直線補間値が採用される.
処理対象期間内のある時点(月)で,その時点の前後に決算がなくて補間処理ができないばあいや,決算データがあっても欠測値「−999999999」であるばあい,当該企業を集計から外して時系列を作成する.集計の対象となる全部の企業について数値が欠落する時点(月)は数値の代わりに△(空白)を入れて欠落値とする.
- 「@st」 資産,負債,従業員数などのように,ストック・データとしての計算処理を行い,各社の数値の集計量を社数で割った一社当り計数の時系列を作成する.社数で除するところを除いて,時系列作成方法,年率換算,欠測値処理は「&st」オペランドと同じである.
- 「#st」 ストック・データとしての計算処理が行なわれる企業の社数に関する時系列を作成する.処理対象期間内のある時点(月)で,ストック・データの集計から外される企業があるばあい,その時点(月)の社数はその分だけ少なくなる.
- 2゜ 欠測値処理オプション 「,」もしくは「*」
- 「,」のばあい, 時系列変量を作成する際に,欠測値「−999999999」はそのまま欠測値として処理する.
- 「*」のばあい,時系列変量を作成する際に,欠測値「−999999999」を0(ゼロ)に置き換えて処理し,欠測値の扱いはしない.
- 3゜
項目番号 4桁の整数(新会計基準の場合)または3桁の整数(旧項番の場合)《2000.8.25修正》
決算項目や企業属性項目の項番を記述する.新会計基準ではXC項番の4桁の数字で指示する.単独決算の項番も,連結決算の項番も共通である.例えば,売上高の新項番は「3001」,従業員数の新項番は「5056」と指示する.
従前からの3桁の数字の旧項目コードもそのまま利用できる.4桁数字の新項目コードと混在していても構わない.例えば単独決算の売上高の旧項番「090」,従業員数の旧項番「158」も利用できる.
なお,新会計基準のXC項番は,各大学のWeb版xcampusホームページの日経NEEDS各種コード検索・閲覧の財務 新会計基準 各種コードに学内限定で掲載している.日本経済新聞社電子メディア局『NEEDS財務データ新会計基準対応
項目定義書』の項目名とXC項番との対応は次のようになっている.
項目名「FAxxx」はXC項番「1xxx」に対応
項目名「FBxxx」はXC項番「2xxx」に対応
項目名「FCxxx」はXC項番「3xxx」に対応
項目名「FDxxx」はXC項番「4xxx」に対応
項目名「FExxx」はXC項番「5xxx」に対応
項目名「FFxxx」はXC項番「6xxx」に対応
項目名「FGxxx」はXC項番「8xxx」に対応《2006.9.25追加》
ヘッダー項番「xxx」はXC項番「7xxx」に対応
なお,新会計基準の財務各種コードの学内ネット上への転載(学外はアクセス不可)については日本QUICK情報(株)から許諾を得ている.
旧項番については,日本経済新聞社データバンク局『日経NEEDS一般事業会社・本決算データ8mmカセット説明書』,あるいは斎藤清『経済・経営・会計系のグラフィックス・システム』晃洋書房の付表2を参照.左端の数字が旧項目番号である.Web版xcampusの場合は各大学のWeb版xcampusホームページの日経NEEDS各種コード検索・閲覧の財務 単独決算各種 旧コードに日経QUICK情報(株)の許諾を得て掲載している.
- 4゜
フラグ変量記号 1文字
時系列変量作成の対象となる,既存のフラグ変量を<
>で囲んで指示する.
- 5゜
変量名 英字48文字または漢字24文字以内の任意の文字
ユーザの好みの変量名を与えることができるが,変量名は互いに異なっていなければならない.
- 売上高や営業利益などの損益計算書に記載の項目はフロー・データなので,時系列作成オペランドとして集計量「&fl」,一社当たり計数「@fl」,社数「#fl」を用いる.流動資産や資本などの貸借対照表に記載の項目はストック・データなので,集計量「&st」,一社当たり計数「@st」,社数「#st」のオペランドを用いる.この差異に十分に注意されたい.
- 月次の時系列が作成されるが,すべて年率換算値であることに注意されたい.そして時系列変量の内部データは実数として作成されるが,時系列作成情報においては,小数点以下を表示しないで整数で表示される.
- また,時系列の各時点において集計の対象となった企業の社数は,重要な指標である.対象企業の社数の増減は,時系列データの集計量に重要な影響を及ぼす.この時系列変量を分析に利用する際には,社数も同時に表示される時系列作成情報を事前に注意深く調べる方がよいであろう.時系列作成情報については,書式($t in $$b)例1の出力結果の時系列作成情報を参照されたい.各時点の社数がばらついている場合は,処理対象期間を限定した方がよいであろう.
- 各社の決算データの多くは年1回ないしは2回のデータなのに,月次の時系列が作成されるというのは,不思議な感じがするかもしれない.が,種明しは簡単で,決算期でない月を補間値で埋め合わせているに過ぎないのである.それゆえ,集計の対象となる各社の決算期がばらついている場合は,集計値も月毎に変わるであろうが,決算期が揃っている場合は,フローの集計値は年毎に階段状に変化するだろうし,ストックの集計値は年毎に折線状に変化することになる.このような月次データでも探索的分析には十分に耐えられる.
- もし月次の時系列ではなく,年次や四半期の時系列が必要なばあいは,変量分析セクション($$v)の変数変換($t)のところで,この月次の系列を,年次や四半期の系列に編集すればよい.
<単独決算:大手建設業の売上高原価率・総資本回転率の時系列>
財務データから時系列変量を作成し,時系列分析を行う書式例である.書式($n in $$b)例1と同一部分が多い.時系列の期間を限定し,その間に収録されている大手建設業の企業にフラグ
g を立て,フラグ g の企業群の一覧を出力する.次に,この大手建設業の売上高(新項番3001,旧番090)と売上原価(新項番3002,旧項番091),総資本(負債・資本合計,新項番2144,旧項番089)の集計値の時系列,正確には年率換算の月次の補間値系列の3変量を作成する.
変量分析セクション($$v)で,これらの3系列に各1文字の変量記号を割り当て,変数変換コマンド($t)のところで,月次系列を年度系列に編集し,売上高原価率と総資本回転率の2つの比率を求めている.
=================== b-t-f1
============================
$$b //ビジネス財務セクション
$r //期間限定コマンド
6510,0103 //★1965年10月から2001年3月
$f //フラグ作成コマンド
<g>==..(7103)41401 //★大手建設にフラグg
$n //企業名コマンド
lst,<g> //企業名パラメータ(リスト出力)
$t //時系列作成コマンド
&fl,3001,<g>,sales //売上高
&fl,3002,<g>,cost of goods sold //売上原価
&st,2144,<g>,total liability & net worth //総資本
$l //入力変量名リストコマンド
===============
$$v //変量分析セクション
$a //変量記号割当コマンド
x,sales
y,cost of goods sold
z,total liability & net worth
$t //変数変換コマンド
x=&.a(x)1,4 //月次を年度(4月〜翌年3月)に編集
y=&.a(y)1,4 // 2月期決算の多い業種では「1,4」を「1,3」に変更
z=&.a(z)1,4
r=(y/x*100) //売上高原価率
u=(x/z) //総資本回転率
△=pr*(x,y,z,r,u) //数値プリント(△は半角スペース)
P=:ci(x) //個体(年度)識別文字系列 |
書式($t in $$b)例1の旧プログラム・テキスト参照[b-t-f1-old.txt]
時系列作成情報
時系列データのプリント
時系列データのプロット
- 時系列作成情報 財務データセクション($$b)の時系列作成コマンド($t)による時系列作成情報は,[数値リスト]に出力される.大手建設業の4社の売上高の時系列作成情報は下記のとおりである.
表の左端の数字は西暦年を表し,上段の数字は月を表している.表中の「case」の横の数字は,処理対象となった企業の社数を示している.その真上の各数字は,時系列変量の各時点の計数を示している.計数の絶対値が一定の値を越えたときは,表の上部に10のベキ乗を記して,計数の下位の位を若干落とした数値で表示することがある.
欠落値の内部表現は△(空白)であるが,時系列作成情報では「*********」と表示される.また,表中の「case」の横の社数を表示する欄が「*****」の時点は,処理対象期間の範囲外であることを示している.下記の表には欠落値は見当たらず,処理期間中の社数は常に4社である.
一般には,項目や上場場所によって収録開始期が異なるし,決算期が3月でない企業は決算期が到来していないため最新時点のデータが欠落する.つまり,収録開始期付近や,収録最終年度は社数が減少することがある.収録開始時期については,日本経済新聞社電子メディア局『NEEDS財務データ新会計基準対応
項目定義書』,あるいは斎藤清『経済・経営・会計系のグラフィックス・システム』晃洋書房の付表2を参照されたい.Web版xcampusの場合は,各大学のWeb版xcampusホームページ上の日経NEEDS各種コード検索・閲覧の利用手引き の「日経NEEDS
財務 単独決算 案内」を参照されたい.
とにかく,時系列作成情報の社数の変化には十分に注意されたい.
- 時系列データのプリント 上記の財務データから作成された3つの時系列変量,つまり大手建設業の売上高x,売上原価y,総資本z,そしてこれらの比率である売上高原価率r,総資本回転率uの数値をプリントする.プリント結果は,[数値リスト]に出力されると同時に,[Excelの表]としても出力される.その表計算シートの一部を複写したものである.x,y,zは大手建設業4社合計の数値で単位は百万円である.売上高原価率rの単位は%,総資本回転率uは回数を示す.1996年度以降はバブル後遺症に悩まされ,売上高原価率は90%を超えて高くなり,総資本回転率は0.75を切る低い水準になっている.
|
x |
y |
z |
r |
u |
|
x=&.a(x)1,4 |
y=&.a(y)1,4 |
z=&.a(z)1,4 |
r=(y/x*100) |
u=(x/z) |
1966 |
545783 |
488203 |
557209 |
89.45 |
0.9795 |
1967 |
624762 |
562560 |
646290 |
90.044 |
0.9667 |
1968 |
731292 |
656787 |
756619 |
89.812 |
0.9665 |
1969 |
927698 |
828651 |
887465 |
89.323 |
1.0453 |
|
途中 略 |
|
|
|
|
1995 |
5753312 |
5161572 |
9068244 |
89.715 |
0.6344 |
1996 |
6149441 |
5584448 |
8782391 |
90.812 |
0.7002 |
1997 |
5836589 |
5309336 |
8265253 |
90.966 |
0.7062 |
1998 |
5241421 |
4742436 |
7727673 |
90.48 |
0.6783 |
1999 |
4757220 |
4281644 |
7388927 |
90.003 |
0.6438 |
2000 |
5303264 |
4818165 |
7382427 |
90.853 |
0.7184 |
- 時系列データのプロット
上記の時系列変量のうち,売上高原価率r,総資本回転率uをプロットしたグラフを以下に示す.太い折線グラフが売上高原価率r,細い折線グラフが総資本回転率uである.上下に横縞のついている個所は,内閣府の景気基準日付による景気後退期である.