第 9 章
変数変換($t)1項関数型パラメータ
1項関数型変換オペランド一覧異時点データ処理(時系列のみ)
データ平滑処理(時系列のみ)
データ編集・分解(時系列のみ)
範囲特定化処理
外挿・内挿処理(時系列のみ)
文字列作成処理
フラグ処理
スカラー帰着処理
順序化処理《2001.1.18修正》
変量分析($$v)セクションの変数変換($t)コマンドには9つのタイプのパラメータがあることを前々章で示した.この変数変換パラメータ一覧のうち,1項関数型と2項関数型を除く7つの非関数型パラメータについては前章で説明している.本章では1項関数型を詳述する.2項関数型は次章で述べる.
本ページの書式例参照プログラムはWeb版xcampusの場合は各大学のWeb版のプログラム事例として収録され,クリック1つですぐに実行できる.Windows版の場合は,xcampusの[ファイル]メニューの[開く]をクリックして,xcampusの見本プログラム群の[rffmtprg]フォルダに収録されている.Linux版xcampusの場合は,コマンド xccp を入力することによってプログラム一覧が表示される.
1゜ 2゜ 3゜ 4゜
□=■■■(演算式)定数 |
変数変換のうち演算式で取り扱い困難な「1項関数型変換オペランド」は以下の一覧表の通りである.被変換変数には演算式を用いることができる.これらの変換で経済・経営系のデータ処理の多くは1行で済むことになる.本ガイドでは,よく利用されるオペランド(ゴシック体でハイパーリンク)を優先的に説明している.他のオペランドについては旧著の2冊を参照されたい.
区 分 | オペランド | 内 容 |
---|---|---|
異時点データ処理 (時系列のみ) |
d.. | 差分 |
%.c | 増減率 | |
%.a | 平均成長率 | |
%.i | 指数化 | |
lag | タイムラグ・リード | |
t.. | 時間変数(タイムトレンド) | |
crg | コレログラム系列 | |
データ 平滑処理 (時系列のみ) |
s4< | 季節調整(4年移動型) |
<.a | 移動平均(中央時点位置づけ) | |
<*a | 移動平均(最新時点位置づけ) | |
<.d | 移動勾配 | |
#.1 | 単純指数平滑推定値 | |
#.2 | 2重指数平滑推定値 | |
#.d | 2重指数平滑勾配 | |
<.v | 移動分散 | |
<.s | 移動標準偏差 | |
<.+ | 移動加算 | |
<.r | 対時間移動相関係数 | |
データ編集・ 分解 (時系列のみ) |
&.s | データ編集サメイション |
&.a | データ編集アベリッジ | |
&.p | データ編集ピックアップ | |
”.f | データ分解(フロー補間) | |
”.s | データ分解(ストック補間)・欠落値補間 | |
範囲特定化 処理 |
tim | 有効期間(ケース)の設定 |
ers | 消去期間(ケース)の設定 | |
dmy | ダミー変数作成 | |
tm” | 有効期間(ケース)部分変量作成 | |
@.” | 部分期間(ケース)のスカラー・ベクトル化 | |
外挿・内挿 処理 (時系列のみ) |
x.* | 外挿(前期比等比型) |
x.+ | 外挿(前期比等差型) | |
x&* | 外挿(前期比年率等比型) | |
x&+ | 外挿(前期比年率等差型) | |
x&s | 外挿(前年同期比等比型) | |
i.* | 外(内)挿(目標値設定等比型) | |
i.+ | 外(内)挿(目標値設定等差型) | |
文字列作成 処理 |
:ci | 個体識別文字列 |
:cl | 等高域文字列 | |
:cd | 日付文字列 | |
フラグ処理 | f=i | フラグ(等しい)変量 |
fne | フラグ(等しくない)変量 | |
f=c | フラグ(文字データ等しい)変量 | |
fnc | フラグ(文字データ等しくない)変量 | |
f.> | フラグ(大きい)変量 | |
f>= | フラグ(大きいか等しい)変量 | |
f.< | フラグ(小さい)変量 | |
f<= | フラグ(小さいか等しい)変量 | |
f<< | フラグ(開区間)変量 | |
f.r | フラグ(閉区間)変量 | |
fnb | フラグ(欠落値以外)変量 | |
fal | フラグ(全ケース)変量 | |
sgn | 符号化 | |
スカラー 帰着処理 |
max | 最大値 |
min | 最小値 | |
@.n | 個体(ケース)の数 | |
@.a | 平均 | |
@.s | 総和 | |
@.v | 分散 | |
@.d | 標準偏差 | |
順序化処理 | r.g | 順位(大きい順)系列 |
r.l | 順位(小さい順)系列 | |
その他の 処理 |
frq | 度数系列 |
rfr | 相対度数系列 | |
cum | 累和 | |
z.. | 標準化データ系列 | |
0.b | 欠落値ゼロ置換 | |
l10 | 常用対数 |
オペランド | 内 容 |
---|---|
d.. | 差分 |
%.c | 増減率 |
%.a | 平均成長率 |
%.i | 指数化 |
lag | タイムラグ・リード |
t.. | 時間変数(タイムトレンド) |
crg | コレログラム系列 |
3゜の被変換変量の差分をとる.つまり,{今期の値
−
一定期前の値}を各時点で求める.期数を4゜の定数のところで指示する.期数が1のばあいは特に指示する必要はなく△のままでよい.
書式例 y=d..(x)
{x(t)−x(t−1)}の値が y(t)
となる.
書式例 y=d..(x)4
{x(t)−x(t−4)}の値が y(t)
となる.
3゜の被変換変量の増減率(変化率,成長率)を百分率で求める.つまり,{今期の値
− 一定期前の値} ÷ {一定期前の値} ×
100 を各時点で求める.期数を4゜の定数のところで指示する.前年同期比増減率を求めるばあいは,期数を特に指示する必要はなく△のままでよい.
書式例 r=%.c(x)
は,前年同期比増減率 r を求めている.x
変量が四半期系列とすると,
{x(t)− x(t−4)} / {x(t−4)}× 100 の値が r(t)
となる.
月次データの場合は前年同月比,年次データの場合は前年比増減率が求まる.
月次データや四半期の場合で,前月比や前期比の増減率を求める場合には,
書式例 u=%.c(y)1
のように記述する.
{y(t)− y(t−1)} / {y(t−1)}× 100 の値が u(t)
となる.
3゜の被変換変量について基準時の値を
100 とする指数を作成する.つまり,{今期の値} が
{基準時の値}
に比してどの程度の比率なのか,を各時点で求める.基準時点を4゜の定数のところで「年.期」と指示する.
ある年の暦年平均値を基準とする場合は,4゜の定数の基準時の指定を「年.0」と指示する.年次データの場合も,基準時の指定を「年.0」と指示する.
書式例 y=%.i(x)2000.4
月次データのばあい,x の2000年4月の数値を基準として,すなわち
100 として x を指数化したものが y となる.
書式例 y=%.i(x)2000.0
月次や四半期データのばあい,x
の2000暦年中の平均値を基準として,すなわち 100 として
x を指数化したものが y となる.
年次データのばあい,x の2000年の値を基準として x
を指数化したものが y となる.
3゜の被変換変量のデータ期間を対象に時間軸変量ないしは時間変数(タイムトレンド)を作成する.
3次元図の1つの軸を時間軸に設定する場合,事前に時間軸変量を作成しておく必要がある.時間軸変量を作成するには,4゜の定数で
year と記述する.
書式例 T=t..(x)year
は,x変量の期間と期種に基づいて時間軸の表示に適する新変量 T
を作成する.これはWindows95/NT版の拡張機能である.
時間変数(タイムトレンド)を作成する場合は,4゜の定数でデータ期間の初期時点にとるべき順序数を指示する.なお,初期時点の順序数が1のばあいは特に指示する必要はなく△のままでよい.
書式例 H=t..(w)
は,w変量の初期時点に1,次の時点に2,さらに次の時点に3,というように1ずつ加算された順序数を作成し,新変量
H としている.
オペランド | 内 容 |
---|---|
s4< | 季節調整(4年移動型) |
<.a | 移動平均(中央時点位置づけ) |
<*a | 移動平均(最新時点位置づけ) |
<.d | 移動勾配 |
#.1 | 単純指数平滑推定値 |
#.2 | 2重指数平滑推定値 |
#.d | 2重指数平滑勾配 |
<.v | 移動分散 |
<.s | 移動標準偏差 |
<.+ | 移動加算 |
<.r | 対時間移動相関係数 |
3゜の被変換変量の移動季節指数型の季節調整済系列を作成する.4゜の定数のところは空白のままでよい.季節指数系列を作成したいときは,4゜の定数のところで「seasonal」と指示されたい.
なお,この4年移動型季節調整法の詳細については,拙著[1990]『非線形経済現象の実証的アプローチ』晃洋書房の§3.2を参照されたい.
書式例 a=s4<(x)
は,x
変量が,月次,あるいは四半期,半年次データであるとき,その4年移動型の季節調整済系列を作成して
a 変量としている.
書式例 s=s4<(x)seasonal
は,x
変量が,月次,あるいは四半期,半年次データであるとき,その季節指数系列を作成して
s 変量としている.この s 変量で元の x
変量を除すれば,4年移動型の季節調整済系列が得られる.
3゜の被変換変量の移動平均系列(中央時点位置づけ)を作成する.奇数項のばあい単純移動平均値を,偶数項のばあい中心化移動平均値を計算して,中央の項の時点に位置付けする.4゜の定数のところで項数を指示する.四半期や月次の系列で1年間相当の項数の移動平均を求めるばあいは,項数を特に指示する必要はなく△のままでよい.
なお,移動平均の詳細は,拙著[1990]『非線形経済現象の実証的アプローチ』晃洋書房の§1.1,§1.2を参照されたい.
書式例 h=<.a(x)
は, x 変量が月次であれば,中心化12項移動平均を,四半期系列であれば中心化4項移動平均を作成して,h
変量としている.
書式例 L=<.a(y)25
は,y 変量の25項移動平均系列を作成して L 変量としている.
3゜の被変換変量の移動平均系列(最新時点位置づけ)を作成する.奇数項
であれ、偶数項であれ、単純移動平均値を計算して,最新の項の時点に位置付けする.4゜の定数のところで項数を指示する.四半期や月次の系列で1年間相当の項数の移動平均を求めるばあいは,項数を特に指示する必要はなく△のままでよい.
なお,移動平均(最新時点位置づけ)の事例としては,『経済情報事例集』の
移動平均の事例1を参照されたい.
書式例 i=<*a(x)
は, x 変量が月次であれば,単純12項移動平均を12項のうちの最新時点に位置づけ,四半期系列であれば単純4項移動平均を
4項のうちの最新時点に位置づける計測を繰り返し,i
変量としている.
書式例 j=<*a(y)6
は,y変量が月次であれば,単純6項移動平均を6項のうちの最新時点に位置づける計測を繰り返し,j変量としている.
罫線(チャート)の6ヵ月移動平均線を求めることになる.
3゜の被変換変量の移動勾配系列を作成する.奇数項のばあい単純移動勾配を,偶数項のばあい中心化移動勾配を計算して,中央の項の時点に位置付けする.4゜の定数のところで項数を指示する.四半期や月次の系列で1年半相当の項数の移動勾配を求めるばあいは,項数を特に指示する必要はなく△のままでよい.
なお,移動勾配の詳細は,拙著[1990]『非線形経済現象の実証的アプローチ』晃洋書房の§1.3,§1.4を参照されたい.
書式例 b=<.d(x)
は, x 変量が月次であれば,中心化18項移動勾配を,四半期系列であれば中心化6項移動勾配を作成して,b
変量としている.
書式例 k=<.d(y)25
は,y 変量の25項移動勾配系列を作成して k 変量としている.
オペランド | 内 容 |
---|---|
&.s | データ編集サメイション |
&.a | データ編集アベリッジ |
&.p | データ編集ピックアップ |
”.f | データ分解(フロー補間) |
”.s | データ分解(ストック補間)・欠落値補間 |
3゜の被変換変量の一定個数の項ずつの累和を求めて集約し,期種を変更する.変換後の期種と変換スタート期を「,」で区切って4゜の定数のところで指示する,
期種は,月次は 12,四半期は 4 ,半年次は 2,年次は 1
で記述する.また変換スタート期は,新変量の各年の初期に対応する元の被変換変量の複数項のうちの最初の項の期を指す.
たとえば,月次データを四半期データに変換するとして,1月・2月・3月の集計を第1四半期にするばあい,定数のところで,「4,1」と指示すればよい.4月・5月・6月の集計を第1四半期にするばあい,定数のところで,「4,4」と指示すればよい.
月次データを年次データに変換するとして,1月〜12月の集計値の暦年データに変換するばあい,定数のところで,「1,1」と指示すればよい.月次データを4月〜翌年3月の集計値の年度データに変換するばあいは,定数のところで,「1,4」と指示すればよい.
四半期データを年次データに変換するとして,第1四半期〜第4四半期の集計値の暦年データに変換するばあい,定数のところで,「1,1」と指示すればよい.
第2四半期〜翌年第1四半期の集計値の年度データに変換するばあい,定数のところで,「1,2」と指示すればよい.
書式例 y=&.s(x)1,1
は,x が月次の場合は,1月〜12月の数値を合計して年次データ
y を作成している.あるいは x が四半期データの場合,第1四半期〜第4四半期の数値を合計して年次データを作成している.
書式例 a=&.s(b)4,1
は,月次データの1月〜3月の数値の合計値を第1四半期の数値とし,4月〜6月の数値の合計値を第2四半期の数値,…,というようにして四半期変量を作成している.
書式例 f=&.s(f)1,2
は,四半期データの第2四半期〜翌年第1四半期の数値の合計値として年度データを作成し,同じ変量記号
f を割り当てている.
3゜の被変換変量の一定個数の項ずつの平均を求めて集約し,期種を変更する.変換後の期種と変換スタート期を「,」で区切って4゜の定数のところで指示する,
期種は,月次は 12,四半期は 4 ,半年次は 2,年次は 1
で記述する.また変換スタート期については,データ編集サメイション「&.s」オペランドと同様である.
書式例 y=&.a(x)1,1
は,x が月次データの場合,1月〜12月の数値の平均を求めて年次データを作成している.あるいは四半期データの場合,第1四半期〜第4四半期の数値の平均を求めて年次データを作成している.
書式例 a=&.a(b)4,1
は,月次データの1月〜3月の数値の平均値を第1四半期の数値とし,4月〜6月の数値の平均値を第2四半期の数値,…,というようにして四半期変量を作成している.
書式例 e=&.a(f)1,2
は,四半期データの第2四半期〜翌年第1四半期の数値の平均値を求めて,年度データを作成している.
書式例 x=&.a(x)4,1
は,月次変量 x の1月〜3月の数値の平均値を第1四半期の数値とし,4月〜6月の数値の平均値を第2四半期の数値,…,というようにして四半期変量を作成し,同じ変量記号
x を割り当てている.つまり,変量 x
は月次データから四半期データに変換されたことになる.
3゜の被変換変量の一定個数の項ずつのうち1つの項だけを取り出して集約し,期種を変更する.変換後の期種とピックアップ・スタート期を「,」で区切って4゜の定数のところで指示する.
期種は,月次は12,四半期は4,半年次は2,年次は1で記述する.またピックアップ・スタート期とは,変換後の新変量の各年の初期に対応する元の被変換変量のピックアップ対象期を指す.その対象期が翌年のばあいは,対象期に元の変量の期種の数を加算した数字を用いる.
たとえば,月次データを四半期データに変換するとして,3月の値をピックアップして第1四半期に,6月の値をピックアップして第2四半期に,…,というようにするばあい,定数のところで「4,3」と指示すればよい.6月の値をピックアップして第1四半期に,9月の値をピックアップして第2四半期に,…,というようにするばあい,定数のところで,「4,6」と指示すればよい.
月次データを年次データに変換するとして,12月の値をその年の値とするばあい,定数のところで「1,12」と指示すればよい.翌年の3月の値をピックアップして年度データに変換するばあいは,3月の3と元の変量の期種の12を加算した15の数値を使って,定数のところで「1,15」と指示すればよい.
四半期データを年次データに変換するとして,第4四半期の値をその年の値とするばあい,定数のところで「1,4」と指示すればよい.翌年第1四半期の値を用いて年度データに変換するばあい,第1四半期の1と元の変量の期種の4を加算した5の数値を使って,定数のところで「1,5」と指示すればよい.
書式例 y=&.p(x)1,12
は,月次データで,12月の数値を用いて年次データを作成している.
書式例 q=&.p(q)1,4
は,四半期データで,第4四半期の数値を用いて年次データを作成し,同じ変量記号
q を割り当てている.つまり,変量 q
は四半期データから年次データに変換されたことになる.
書式例 a=&.p(b)4,3
は,月次データの3月の数値を第1四半期の数値とし,6月の数値を第2四半期の数値,…,というようにして四半期変量を作成している.
書式例 f=&.p(f)1,5
は,f 変量が四半期データの場合,翌年第1四半期の数値を用いて年度データを作成し,同一記号
f を割り当てている.
書式例 g=&.p(h)1,15
は,月次データの翌年3月の数値を用いて年度データを作成している.
3゜の被変換変量の期種を,年次から四半期ないしは月次に,あるいは四半期から月次に変更し,3゜の被変換変量の各時点のデータを新期種の対応する複数期にそのまま割り当てて補間する.分解後の期種と分解スタート期を「,」で区切って4゜の定数のところで指示する.
期種は,月次は 12 ,四半期は 4 ,半年次は 2 ,年次は 1
で記述する.また分解スタート期とは,変換後の新変量の各期のうち,どの期を始点とするものが元の変量の各年の初期に対応しているか,を明示するものである.分解スタート期が前年のばあいは,その期から新期種の数字を減算した数字を指示されたい.つまり,前年の最終期をスタート期とする場合は
0,前年の最終期のもう1期前をスタート期とする場合は -1
,…,というように指示されたい.
たとえば,暦年データを四半期に分解するばあい,定数のところで,「4,1」と指示する.
そのうちの「4」は新期種の四半期を意味し,「1」はその第1四半期からの出発を意味し,第1四半期〜第4四半期までが元の暦年データと同じ数値を有することになる.
また,年度データを四半期に分解するばあい,定数のところで,「4,2」と指示する.そのうちの「4」は新期種の四半期を意味し,「2」はその第2四半期からの出発を意味し,第2四半期〜翌年第1四半期までが元の年度データと同じ数値を有することになる.
四半期データを月次に分解するばあい,定数のところで,「12,1」と指示する.そのうちの「12」は新期種の月次を意味し,「1」はその1月からの出発を意味し,1月〜3月までが元の変量の第1四半期と同じ数値を有することになる.
なお,3゜の被変換変量の途中に欠落値(△)があるばあい,その部分に対応する新変量の各時点も
欠落値(△)となり,その部分の補間は行われない.
書式例 y=".f(x)12,1
暦年データの x
変量の各年次の数値をそのままその年次の各月に割り当てて,月次変量
y を作成する.
書式例 a=".f(b)12,4
年度データの b
変量の各年度の数値をそのままその年度の4月以降から翌年3月までの各月に割り当てて,月次変量
a を作成する.
書式例 c=".f(d)12,1
四半期データの d
変量の第1四半期の数値をそのままその対応する1月から3月までの各月に割り当てる形で,月次変量
c を作成する.
書式例 e=".f(f)12,4
四半期データの f
変量の第1四半期の数値をそのままその対応する4月から6月までの各月に割り当てる形で,月次変量
e を作成する.
書式例 g=".f(h)12,-4
7月決算の売上高のような年1回のフロ−・データを想起されたい.それは,前年の8月以降の活動の結果である.それゆえ月次に分解するばあい,前年の8月〜その年次の7月までの各月に均等に(年率ベースで)
年次のフロー・データを配分することを考える.分解スタート期としては,前年の8月であるので分解後の新期種の
12 を減算した -4 を指定している.
実際例 q=".f(p)4,2
p 変量の各年度データをそのままその年度の,すなわち第2四半期〜翌年第1四半期の各四半期に割り当てて,四半期データ
q を作成する.
3゜の被変換変量の期種を,年次から四半期ないしは月次に,あるいは四半期から月次に変更し,3゜の被変換変量の近接の2時点のデータを直線補間した値を,新期種の対応期に割り当てる.分解後の期種と分解スタート期を「,」で区切って4゜の定数のところで指示する,
期種は,月次は 12,四半期は 4,半年次は 2,年次は 1
で記述する.また分解スタート期については,データ分解(フロ−補間)「".f」オペランドと同様である.「".s」オペランドの補間値は,フロー・データのように同一の値になるのではなく,近接時点間の直線補間値となる点が,「".f」オペランドと異なるところである.
また,3゜の被変換変量の途中に欠落値(△)があっても,その部分に近接する2時点のデータを使って直線補間がなされる.この点も,「".f」オペランドと異なっている.
したがって,「".s」オペランドを用いると,3年ごとや5年ごとデータの,あるいは不規則なデータの,欠測値部分を直線補間で埋めることができる.期種を変更しないで欠落値を埋めるだけの場合,定数項は空白(△)のままでよい.
書式例 y=".s(x)12,1
x 変量は,1月からの累積結果がその年末の数値に反映されている暦年データであるとする.このばあい,1月を分解スタート期とし,各年末(12月)の数値を直線補間した月次変量
y が作成される.
書式例 a=".s(b)12,4
b 変量は,4月からの累積結果がその年度末の数値に反映されている年度データであるとする.このばあい,4月を分解スタート期とし,各年度末(3月)の数値を直線補間した月次変量
a が作成される.
書式例 c=".s(d)12,1
d 変量が四半期データであるとしたとき,すなわち1月・2月・3月の累積結果が第1四半期末の数値に反映されているような四半期データであるとしたとき,1月を分解スタート期とし,各四半期末(3月,6月,9月,12月)の数値を直線補間した月次変量
c が作成される.
書式例 m=".s(n)12,4
全国市街地価格指数は,9月と年度末の3月の半年に1回の調査である.この半年次のデータを月次データに分解する書式例である.4月をスタート期として半年間の地価の上昇(下降)の積み重ねが9月時点の市街地価格になったと解釈できる.n
変量の3月と9月の数値を直線補間で補う形の月次の新変量
m 作成される.
実際例 v=".s(q)
q
変量は年次データであるが,事業所統計のように途中の年次が欠落しているデータであるとする.この欠落部分を直線補間で埋めて同一期種の年次変量
v を作成する.
オペランド | 内 容 |
---|---|
tim | 有効期間(ケース)の設定 |
ers | 消去期間(ケース)の設定 |
dmy | ダミー変数作成 |
tm” | 有効期間(ケース)部分変量作成 |
@.” | 部分期間(ケース)のスカラー・ベクトル化 |
3゜の被変換変量のデータ期間を対象にダミー変数を作成する.ダミー(1の値)を入れる期間を4゜の定数のところで上述の範囲指定に従って指示する.ダミー(1の値)の入った期間以外の各期にはすべて0が入る.
書式例 a=dmy(b)1970.0,1979.0
は,年次の変量 b のデータ期間中,1970年代の各年に1の数値が入り,その他の年には0の数値が入ったダミー変数
a が作成されている.
書式例 x=dmy(q)1973.4,1975.1
は,四半期データで,変量 q
のデータ期間中,では,第1次石油ショク時期の1973年第4四半期から1975年第1四半期までの各期に1の数値が入り,その他の期間には0の数値が入ったダミー変数
x が作成される.
書式例 y=dmy(q)1980.3
では,四半期データで,変量 q のデータ期間中,1980年第3四半期にのみ1の数値が入り,その他の期間には0の数値が入ったダミー変数
y が作成される.
書式例 z=dmy(q)1996.2,2005.4
では,四半期データで,変量 q の1996年第2四半期以降2005年第4四半期までを1とし,他を0とするダミー変数
z が作成される.
以上のダミー変数 x,y,z
を加算することによって,つまり,
d=(x+y+z)
によって,第1次石油ショック時期,1980年第3四半期,1996年第2四半期以降の期間に1の数値が入り,その他の期間は0のままの新しいダミー変数
d
が作成される.この方法により,データ期間の任意の複数の個所にダミーを入れることが可能となる.
書式例 a=dmy(g)△.△,1985.0
では,年次変量 g のデータ期間中,収録開始期から1985年までの各期に1の数値が入り,その他の期間には0の数値が入ったダミー変数
a が作成される.
3゜の被変換変量について,4゜の定数の範囲だけを残し,他は切り捨てた新変量を作成する.残す部分は,上述の範囲指定に従って指示する.,
たとえば,四半期データに関して
x=tm"(n/m*100)△.△,1979.4
では,演算式 n/m*100 の比率の収録開始期から1979年第4期までの前半部分だけの新変量
x が作成され,後半部分はそっくり切り捨てられる.
逆に前半部分を切り捨てて後半部分だけの新変量 y は,
y=tm"(n/m*100)1980.1,9999.△
と表現される.
途中の1975年〜1985年部分だけを残し,前後の部分を切り捨てる場合は,
z=tm"(n/m*100)1975.1,1985.4
と表記すればよい.
オペランド | 内 容 |
---|---|
x.* | 外挿(前期比等比型) |
x.+ | 外挿(前期比等差型) |
x&* | 外挿(前期比年率等比型) |
x&+ | 外挿(前期比年率等差型) |
x&s | 外挿(前年同期比等比型) |
i.* | 外(内)挿(目標値設定等比型) |
i.+ | 外(内)挿(目標値設定等差型) |
3゜の被変換変量の外挿値を,前期の値に一定比率を乗じる形で作成する.その等比定数を年率換算値で指示する点が,「x.*」の前期比等比型外挿と異なる.4゜の定数の指示形式は,
「外挿始点,外挿終点,年率等比定数,外挿初期値」
である.
計算内容を明らかにしておこう.ここで与えられる年率等比定数
q は,データ期種を m とするとき,ベキ乗を ** で表記すると
r
**m = q
を満たすような前期比等比定数 r
に自動的に変換されて,前期比等比型外挿が行われる.外挿期間の各数値は,外挿初期値を
a とするとき,
a,a・r,a・r**2,a・r**3,……
というようになる.
r>1
の場合は,時間の経過とともに外挿値は等比級数的に増大する.
r<1 の場合は,等比級数的に減少する.
r=1 のばあいは,初期値 aの値のまま推移する.
典型的な書式例をいくつか例示する.
書式例 y=x&*(y)△.△,2000.4,1.02,△
は,四半期の変量 y について収録最終時点より2000年第4四半期まで,年率2%(等比定数
1.02)で増大する外挿を行っている.
書式例 y=x&*(y)△.△,2000.4,0.98,△
は,四半期の変量 y について収録最終時点より2000年第4四半期まで,年率2%(等比定数
0.98)で減少する外挿を行っている.
書式例 y=x&*(y)△.△,2000.4,1,△
は,四半期の変量 y について収録最終時点より2000年第4四半期まで,不変のまま(等比定数
1 )で推移する外挿を行っている.
書式例 z=x&*(v)1997.5,1999.12,1.03,4500
は,月次の変量 v の外挿期間を1997年5月から1999年12月までとし,年率等比定数を
1.03,外挿初期値を4500にして作成した外挿変量を z
としている.つまり z は,1997年5月の初期値 4500
から毎月,年率ベースで 3% の増加率で増えることになる.
書式例 u=x&*(w)△.△,1999.4,1.02,△
u=x&*(u)△.△,2003.4,0.97,△
は,四半期変量 w について,収録最終時点より1999年第4四半期まで,年率2%(等比定数
1.02)で増大し,その後 2003年第4四半期までは,年率3%(等比定数
0.97)で減少するような新変量 u
を,2つの式を用いて作成している.
オペランド | 内 容 |
---|---|
:ci | 個体識別文字列 |
:cl | 等高域文字列 |
:cd | 日付文字列 |
3゜の被変換変量のデータ期間を対象に,散布図や3次元図作成用の個体識別(Case
Identify)の文字列変量を作成する.
4゜の定数のところはスペース(△)のままの場合,自動的に文字列が作成される.時系列の場合は年ごとに異なる文字になる.例えば,四半期の場合は,
aaaabbbbccccdddd…zzzAAAABBBBCCC…ZZZZ
という文字列変量が作成される.クロスセクションの場合は,各個体にアルファベットの小文字,大文字が
abcdd…zzzABC…Z0123456789abcdd…zzzABC…Zabcdd…
というように順に割り当てられる.
4゜の定数のところでユーザの好みの半角英数の個体識別文字を並べることもできる.1行(72カラム以内)で指示できないときは,適当なところで切って次行の先頭カラム以降に続けて指示する.データ期間よりも多くの文字を指示しても構わないが,超過した文字は無視される.
書式例 P=:ci(y)
は,変量 y
のデータ期間(ケース)を対象に,各時点(ケース)に1文字の文字を入れた新変量
P を作成している.文字列は上記のように自動的に割り振られる.
書式例 Q=:ci(u)abcdefghijlmnopqrstuvwxyz
ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ
0123456789
は,四半期や月次の変量については,定数を△のままにすると年の識別はできても,同一年の各期は同じ文字が割り当てられるので,それを避けるために定数で各期に異なる文字を割り当てている.
オペランド | 内 容 |
---|---|
f=i | フラグ(等しい)変量 |
fne | フラグ(等しくない)変量 |
f=c | フラグ(文字データ等しい)変量 |
fnc | フラグ(文字データ等しくない)変量 |
f.> | フラグ(大きい)変量 |
f>= | フラグ(大きいか等しい)変量 |
f.< | フラグ(小さい)変量 |
f<= | フラグ(小さいか等しい)変量 |
f<< | フラグ(開区間)変量 |
f.r | フラグ(閉区間)変量 |
fnb | フラグ(欠落値以外)変量 |
fal | フラグ(全ケース)変量 |
sgn | 符号化 |
3゜の被変換変量の数値が,4゜の定数項の数値より大きい場合に
1 ,その他の場合に△(空白)とするフラグ変量を作成する.
書式例 H=f.>(abs(y-K)/absy)0.002
は,変量 y の変量 K からの乖離の絶対値と,変量 y
の絶対値との比率,つまり乖離率が 0.002
より大きい時点(ケース)については
1,等しいもしくは小さい時点(ケース)については△(欠落値)とするフラグ変量
H を作成している.
オペランド | 内 容 |
---|---|
max | 最大値 |
min | 最小値 |
@.n | 個体(ケース)の数 |
@.a | 平均 |
@.s | 総和 |
@.v | 分散 |
@.d | 標準偏差 |
3゜の被変換変量の全時点(ケース)の数値の算術平均を求め,その数値のみのスカラー変量を作成する.4゜の定数項は△(空白)のままでよい.
書式例 H=@.a(y)
は,変量 y の算術平均のスカラー変量 H を作成している.
オペランド | 内 容 |
---|---|
r.g | 順位(大きい順)系列 |
r.l | 順位(小さい順)系列 |
3゜の被変換変量の全ケースの数値についての大きい順に順位(ランキング)づけを行い,順位変量を作成する.同一数値が複数個ある場合は,それらのケースには最初のケースと同じ順位を付与する.4゜の定数項は△(空白)のままでよいが,欠測値があることが想定され,欠測値の情報も有用である場合には,定数項に「blank」の5文字を記述されたい.
書式例 j=r.g(x)
// xによる大きい順の順位変量jの作成
書式例 j=r.g(d)blank
// dの大きい順(定数項blankで欠測値にも末尾の順位)の順位変量j
「Web版xcampus財務ランキング事例集」に多数のプログラムを掲載
<マクロ:百貨店販売額の四半期編集・前年同期比増減率・移動勾配>
日本経済データセクション($$n)の時系列入力コマンド($t)で,百貨店の販売額の月次系列を入力している.
変量分析セクション($$v)の変量記号割当($a)コマンドで,この系列に変量記号
x を割り当てている.変数変換($t)コマンドで,月次の百貨店販売額xを3ヶ月ごとに合計して4半期系列に直し,その前年同期比増減率の変量rと,個体識別文字列変量Pを作成している.百貨店販売額の増減率rの移動平均aと移動勾配bを求めている.直前に表示範囲コマンド($d)で全ケース(期間)を指示しているので,プリント「pr*」オペランドでの変量記号x,r,a,bの数値データは全範囲が出力される.
// v-t3-f1 $$n //日本経済セクション $t //時系列入力コマンド SDS,department sales //百貨店販売額 (MTコード88011) $l //入力変量リスト ============ コメント行 $$v //変量分析セクション $a //変量記号割当コマンド x,department sales //百貨店販売額に x の変量記号 $d //表示範囲コマンド all //全ケース(期間) $t //変数変換コマンド x=&.s(x)4,1 //[&.s]データ編集(合計)[4,1]四半期へ,1月始点 r=%.c(x) //増減率(前年同期比) P=:ci(x) //個体識別文字列作成 a=<.a(r) //移動平均 b=<.d(r) //移動勾配 △=pr*(x,r,a,b) //プリント(△はスペース1文字) ================ コメント行 $$g //グラフセクション $d //表示範囲コマンド all //全ケース(期間) $p //プロットコマンド x,r //変量xと変量rを別スケールで ra,b //変量r,aは同一スケール,変量bは別スケール $c //散布図コマンド (△はスペース1文字) b,a,△,P //縦軸b,横軸a,回帰線なし△,散布点印字P ================== コメント行 $$ //終了セクション |
書式($t in $$v)1項関数型例1のプログラム参照[v-t3-f1.txt]