第 8 章
変量分析セクション($$v):変数変換($t)非関数型
演算式単独型・変数変換パラメータ
ベクトル内積型・変数変換パラメータ
ベクトル連結型・変数変換パラメータ
プリント型・変数変換パラメータ
条件文型・変数変換パラメータ
変量記号削除型・変数変換パラメータ
変量名付与型・変数変換パラメータ
書式($t in $$v)非関数型例1
変量分析($$v)セクションの変数変換($t)コマンドには9つのタイプのパラメータがあることを前章で示した.この変数変換パラメータ一覧のうち,1項関数型と2項関数型を除く7つのパラメータ形式について説明する.1項関数型は次章,2項関数型は次々章で詳述する.
1゜
2゜
- [説明]
このパラメータでは,前章で説明している演算式による変換を行い,変換後の新変量に1文字の変量記号を割り当てる.
例えば,時系列 x
の3期のタイムラグ変量の指数をとり,それに r
変量を加算して,さらにその結果を n 変量で除算し,定数
24.8 を加える場合,
y=(expx3+r)/n+24.8
のように記述することになる.また定数のみのスカラー変量は
c=(5098.5)
のように記述される.
- 1゜ 新変量の変量記号 任意の英字1文字,または「?」記号つきの任意の英字1文字
変量に与えるべき変量記号を指示する.任意の小文字,大文字の英字1文字,「?」記号のついた英字の大文字,小文字が使用できる.つまり,a,b,…,z,A,B,…,Z,?a,?b,…,?z,?A,?B,…,?Zのいずれかを記述する.
但し,これまでに割り当てられた変量記号も含めて,すべての変量記号は互いに異なっていなければならない.既に別の変量に割り当てられている変量記号と同じ記号を新変量に割り当てることもできるが,そのばあいには前の変量への割当は解除され,新変量への割当のみが存続することになる.割り当てられた変量記号は当該セクションだけではなく,これ以降の別のセクション内においても有効である.
この但し書きは,新変量の変量記号すべてに共通することである.それゆえ,以下の各パラメータでは但し書きの記述を省略している.
- 2゜ 演算式
四則演算,タイムラグ,対数,指数,絶対値などの演算を,前章の演算式の構成要素に基づいて記述する.
演算式の直前の左丸括弧「(」は必須である.それによって1項関数型や2項関数型と区別するのである.例えば,n 変量と同じ内容の新変量
N を作成する場合でも N=(n) というように =
の直後の左括弧は必須である.
1゜
2゜ 3゜
- [説明]
このパラメータでは,右辺の「”」より左の( )内の各要素と,「”」より右の係数ベクトル変量との内積を計算する.
3゜の係数ベクトル内部の要素の数が,2゜の変数(演算式)の数より1つ多い場合は,係数ベクトルの最後の要素の数値が内積結果に加算されることになる.
最も簡単な内積の例として,変量 x と変量 q
の内積の結果であるスカラー変量 c は,
c=(x)"q
と記述される.
また,係数ベクトルが
q=(o.7834,-1.346,-0.0073,27.8)
のときに,
i=(logr4,logy,logi11)"q
と記述される内積計算では,
i=0.7834logr4-1.346logy-0.0073logi1+27.8
の計算が行われることになる.
なお係数ベクトル変量は,ケース番号1から始まり,ケースの数が2゜の変数(演算式)の数に等しいか,1つ多い変量のことである.係数ベクトル変量は一般に,回帰分析($r)コマンドの回帰係数ベクトル作成パラメータで,つまり「@”*」ないし「@”.」の回帰オペランドで作成される.次のベクトル連結型パラメータでも与えることができる.
- 1゜ 新変量の変量記号 任意の英字1文字,または「?」記号つきの任意の英字1文字
変量に与えるべき変量記号を指示する.任意の小文字,大文字の英字1文字,「?」記号のついた英字の大文字,小文字が使用できる.つまり,a,b,…,z,A,B,…,Z,?a,?b,…,?z,?A,?B,…,?Zのいずれかを記述する.
- 2゜ 内積対象変数の演算式
内積の対象となる変数を演算式で指示する.但し,定数のみの演算式は除く.つまり,この演算式には少なくとも1つの変量記号が含まれなければならない.
複数の変数を要素とする内積のばあいは,それら(演算式)を「,」で区切って複数個並べることになる.
これら演算式の並びの最初と最後は丸括弧で囲まなければならない.
- 3゜ 係数ベクトルの変量記号 英字1文字,または「?」記号つきの英字1文字
2゜の変数(演算式)の各要素との内積を行う係数ベクトルの変量記号を指示する.
係数ベクトルの要素の数は,2゜の変数(演算式)の数にちょうど等しいか,1つ多いかのどちらかである.1つ多い場合は,係数ベクトルの最後の要素の数値が内積結果に加算されることになる.
1゜
2゜
- [説明]
このパラメータでは,右辺の( )内の各要素を連結して1変数のデータを作成する.つまり,1番目の要素の演算式の直後に,2番目の要素の演算式のデータをデータ期間(ケース番号)を無視して単純に連結し,さらに3番目以降の演算式がある場合は,それらのデータも単純連結する形で1変量のデータを作成するのである.以下の例のように応用範囲は広い.
v=(100.5,127.3,118.2,121.9.130.7)
は,ケース番号1から始まり,ケースの数が5個の新変量 v が作成されることになる.このように,ベクトル内積型変換に用いる係数ベクトル変量を作成することができる.
また,変量 r が四半期の時系列で1996年第4四半期まで入力されていて,それに1997年第1四半期〜第3四半期のデータを新たに付加したい場合,
r=(r,45384.6,47683.7,50203.1)
のように記述すればよい.
いま各変量は産業ごとの企業別クロスセクション・データとする.ある産業についての変量
a と変量 b の比率(百分率),別の産業についての変量 c と変量
d の比率,もう1つ別の産業についての変量 e と変量 f
の比率を単純に連結して,全産業についての新しい比率のクロスセクション・データ
h を作成したい場合,
h=(a/b*100,c/d*100,e/f*100)
のように記述すればよい.
5年分の年次別クロスセクション変量 A,B,C,D,E をプーリングして1変量
G に統合するには次のように記述する.
G=(A,B,C,D,E)
- 1゜ 新変量の変量記号 任意の英字1文字,または「?」記号つきの任意の英字1文字
変量に与えるべき変量記号を指示する.任意の小文字,大文字の英字1文字,「?」記号のついた英字の大文字,小文字が使用できる.つまり,a,b,…,z,A,B,…,Z,?a,?b,…,?z,?A,?B,…,?Zのいずれかを記述する.
- 2゜ ベクトル対象変数の演算式
ベクトル連結の対象となる変数(演算式)を「,」で区切って複数個並べることになる.
これら演算式の並びの最初と最後は丸括弧で囲まなければならない.
1゜ 2゜
- [説明]
このパラメータでは,2゜の各演算式のデータ・プリントを行う.Windows95/NT版でのデータ・プリントは,主としてこのパラメータで行われる.従前はプリント($p)コマンドによる方法が一般的であったが,表計算への出力において,プリント($p)コマンドのように5列ごとにページ替えすることなく,最大32列(変量)の一括出力が可能である点で優れている.
また,演算式も利用できる.例えば,変量yの変量
Y に対する乖離率の絶対値,変量y,変量 Y
についてのプリントは,
△=pr*(abs(y-Y)/absY*100,y,Y)
と記述できる.企業名については最大4変量(漢字8文字,半角16文字)までが1列にまとめられて出力される.
なお,変数変換($t)コマンドの直前に表示範囲指定($d)コマンドがないばあい,時系列変量は最近の100期だけ,クロスセクション変量は最初100ケースだけのプリントとなる.
- 1゜ プリント・オペランド
特定の3文字
- 「pr*」
2゜の全演算式について,各演算式のケース(期)を越える部分や,欠落値(△)についても,データ・プリントを行う.表計算への出力では,欠落値は「#N/A」と記述される.
- 「prt」
2゜の全演算式に共通にデータが存在するケース(期)についてのみ,データ・プリントを行う.欠落値(△)が1つでもあるケース(期)については,データ・プリントを行わない.
- 2゜ プリント対象変数の演算式
プリントの対象となる変数(演算式)を「,」で区切って複数個並べることになる.
これら演算式の並びの最初と最後は丸括弧で囲まなければならない.
1゜
- [説明]
この1組のパラメータで,別の章で説明する反復処理からの条件分岐を指示することができる.例えば
((m((
:
:
△=if.(H,I,J)
))m))
((m))10
△=to.
において「((m((」行から「))m))」行までの処理が,そのままであれば「((m))10」行の10回を加えて,合計11回繰り返されることになる.しかし,「if.」文の中の
H 変量,I 変量,J
変量の全ケースのデータが空白(ブランク)になった時点で,反復処理は中止され,「to.」文まで分岐することになる.
- 1゜ 条件分岐対象変数の演算式
条件分岐する場合の対象となる変数(演算式)を指示する.指示された全変数の全ケースのデータがすべて空白(ブランク)になったときにのみ分岐が働き,その他の場合は何の処理も行われない.
1゜
- [説明]
このパラメータでは,変量記号の割り当てられている変量のうち不用になった変量を変量分析セクションから削除(delete)する.例えば,変量
x の割当を解除する場合,
△=del(x)
と指示し,変量 x,変量 y,変量 z
の3変量の割当を解除する場合,
△=del(x,y,z)
と記述すればよい.
- 1゜ 削除対象変量の変量記号 英字1文字,または「?」記号つきの英字1文字
変量記号の割当を解除すべき変量の変量記号を並べる.
1゜
2゜
- [説明]
このパラメータで,変数変換後の新変量にユーザの好みの変量名を与えることができる.例えば
$t
f=(w+d+h+x-m)
f,nam,fixed cost
v=(c+h+x-mm-f)
v,nam,variable cost
とすることによって,変換後の各変量に直ちに新変量名を与えるとともに,各変換の意味を明確にすることができるのである.
- 1゜ 変量記号 英字1文字,または「?」記号つきの英字1文字
変量名を与えるべき変量の変量記号を指示する.
- 2゜ 新変量名 20文字(漢字は10文字)以内の任意の文字
ユ−ザの好みの変量名を与えることがでいる.
個体識別文字,等高域文字,日付文字,フラグ文字などの文字列をデータとする変量については,新変量名の最初の4文字は「:ci」でなければならない.
企業名,項目(系列)名,ケース名などの文字をデータとする変量については,新変量名の最初の4文字は「:n1,」ないしは「:n2,」,…,「:n6,」でなければならない.これら先頭4文字の意味については,ビジネス財務セクション($$b)の企業名($n)コマンドのパラメータの説明を参照されたい.
なお,20文字(漢字10文字)を越えて変量名を指示しても構わないが,xcampus内部には最初の20文字(漢字10文字)しか入力されない.
財務データからクロスセクション変量を作成し,散布図によるクロスセクション分析を行う書式($c in $$b)例1
の再掲である.また書式($n in $$b)例2 と業種選択を除いて同一である.分析時点を限定し,その間に収録されている医薬品業の企業にフラグ
g を立てる.フラグ g の企業群のリストを出力するとともに,企業名の最初の漢字6文字分として3つの企業名変量を作成する.次に,この医薬品業の売上高と売上原価,長期借入金のクロスセクション系列を作成する.
ビジネス財務セクション($$b)で入力した企業名変量,クロスセクション変量に,変量分析セクション($$v)の変量記号割当($a)コマンドで各1文字の変量記号を割り当てる.
変数変換($t)コマンドで,売上高原価率,長期借入金売上高比率を求め,プリント出力している.プリント結果については書式($c
in $$b)例1のクロスセクション・データのプリントをみられたい.
=================== b-c-f1 ============================
$$b //ビジネス財務セクション
$r //期間限定コマンド
0004,0103 //2000年4月から2001年3月までの2000年度を対象
$f //フラグ作成コマンド
<g>==..(7103)09081,09082,09083 //医薬品業にフラグg
$n //企業名コマンド
lst,<g> //パラメータ(リスト出力)
:n1,<g> //企業名の最初の漢字2文字変量
:n2,<g> //企業名の次の漢字2文字変量
:n3,<g> //企業名のその次の漢字2文字変量
$c //クロスセクション作成コマンド
flw,3001,<g>,sales //売上高
flw,3002,<g>,cost of goods sold //売上原価
stk*2101,<g>,long-term loans //長期借入金(4カラム*は欠落値ゼロ置換)
$l //入力変量名リストコマンド
===============
$$v //変量分析セクション
$a //変量記号割当コマンド
N,:n1,<g>
A,:n2,<g>
M,:n3,<g>
x,sales
y,cost of goods sold
z,long-term loans
$t //変数変換コマンド
r=(y/x*100) //売上高原価比率
d=(z/x*100) //長期借入金売上高比率
△=pr*(N,A,M,x,y,z,r,d) //数値プリント(△はスペース1文字)
P=:ci(x) //個体(企業)識別文字系列 |